理想性の向上と理想化

TRIZの知見によれば、技術システムは理想性が向上する方向に進化するといいます。

ここでいう理想性は、システムの有益な諸特性の合計を有害な(望ましくない)諸特性の合計で割った値と定義されます。

したがって、「理想性の向上」は、システムの有益な特性の増化・改善、または有害な要因の減少・軽減、あるいは、これら両方によって生じます。

理想性を徐々に向上させる一般的なアプローチとしては、以下のようなことが考えられます。
(1)有益な機能や特性の数を増やす
たとえば、①対象としているシステムの周辺の他のシステムやシステムの環境が持っている有益な機能をシステムに取り入れる、②新たな有益機能を発明してシステムに付け加える、など。
(2)有益機能の質(あるいは、他の性能)を改良する
(3)システムの有害な要因の数を減らす
たとえば、①有害な要因を排除・回避する、②有害な作用をそこならば有害な影響が軽減される他のシステムやシステムの他の部分に振り向ける、③有害な要因を有益に活用する方法を発見する、など。
(4)有害さの程度を軽減する
(5)(1)~(4)を複数組み合わせて実現する

理想性の向上を図るには、以下のような資源の活用によって達成することが可能です。
(1)システムおよびシステムの環境に含まれるあらゆる物体(廃棄物も含む)
(2)使われていないエネルギー、力、作用
(3)活用されていない時間
(4)使われていない空間
(5)システムまたはその一部、あるいはシステムの環境内の何かが追加の機能をはたす可能性
(6)システムに関する情報

「理想性の向上」に関連した概念に「理想化」という考え方があります。

「理想化」とは、システムそのものが存在しないのに必要な機能が得られる理想的なシステムを目標とする考え方のことです。

理想化という発想をもつことによって、利用可能な資源と与えられた制約の範囲内で、できるだけ理想的な状態に近づけるといった現実的なアイデアの発想が可能となります。

システムの理想化を行うには、以下の事項を検討します。
(1)システムの中の重複する要素を取り除く
(2)現在より集積度の高い下位システムを使う
(3)付随的機能を取り除く
(4)セルフサービスの仕組みを取り入れる
(5)要素をできるだけ減らす
(6)別々になっている下位システムをまとめて一つにする
(7)全体を取り替えて単純化をはかる