ものづくりプロセスに不可欠な不具合分析(FA)

アイディエーション・インターナショナル社が開発した不具合分析(FA:Failure Analysis)は、革新的なものづくりプロセスにはなくてはならない手法であると考えます。
問題解決の最初の段階では、問題を抱えているシステムの現状を詳細に把握することが重要になります。問題状況の把握ができると、取り組むべき課題が明確になり、問題解決までの距離が一気に縮まります。
I-TRIZでは「問題情報の把握」という名の下に、問題を多くの観点で観察するシステムアプローチを行って利用可能な資源を把握し、システムを変化させるうえでの制約と制限を明らかにします。制約と制限は問題解決の良否を判定する際の評価基準になります。
システムアプローチには、(1)システム階層、(2)機能、(3)時間、(4)問題といった4つの観点がありますが、不具合分析(FA)は問題の観点に関係します。
問題の観点では、問題の直接の原因は何か?、解決すべき問題は何か?、問題の状況が改善されないとどのような望ましくない結果が起きるか?、などの内容を確認します。
問題解決案を出すには、問題を抱えているシステムを何らかの方法で変化させて、問題の原因がなくなってしまうか、原因が望ましくない結果を引き起こすことがないようにすることが可能かを考えます。
このときに重要なのが、原因はどのようにして結果に変わるのかという問題発生のメカニズムを知ることと、問題が起こるにどのような条件が必要か?、といことです。
問題発生のメカニズムを明らかにするには、一般に、その問題がなぜ起きたかという原因を順に辿っていく根本原因分析という手法が採用されますが、初めての問題や複雑な問題にあっては簡単には明らかにできません。
初めての問題や複雑な問題の問題発生のメカニズムを見つけるには、以下のような手順による不具合分析(FA)が最適です。
システムにはシステムの目的である基本有益機能とその基本有益機能をもたらすためのシステムの本来のメカニズムがあります。そして、システムの有益機能のそれぞれに伴う、またはそれによって引き起こされる有害機能もあります。
不具合分析(FA)では、不具合が不具合として認識される直前に起こった事象(最終事象)を特定します。どのようなことの直後に、あるいは起こった直接の結果として、不具合が発生したとみなされるか、その機能、作用、あるいは状態が最終事象です。
その不具合に伴って生じる、または、 不具合の際にいつも観察される事象(併発事象) あるいは特徴的な状況(特徴的状況)を確認します。不具合の出現に何らかの相関性を持つ、システム(およびその環境)の特性値やその他の事象をすべて抽出します。
システムの有益機能と有害機能が明らかになったら、システムの有益機能および有害機能それぞれのボックスを作成し、それぞれの間の関係を示すリンクでつないだダイヤグラムを作成します。
ダイヤグラムの中に「最終事象」「併発事象」および「特徴的状況」のボックスを作成し、これらと不具合とを、相互関係を示すリンクによって結びつけます。
出来上がったダイヤグラムを見ながら、すべてのボックス同士の因果関係の整合性を確認することで、どうしたら不具合が起こせるかの仮説を立てます。次に、その仮説を可能にする資源がシステムの中やその環境に存在するか否かを確認します。
複数の仮説が考えられた場合には、作用する力が大きいメカニズム(弱い力しか働かない現象よりも、大きな力の働く現象の方が生じる可能性が高い)や単純なメカニズム(少数の前提条件が同時に成立つ確率は、多くの前提条件が同時に成立する確率より高い)を選びます。
選ばれた仮説に基づく再現試験(因果関係が確認できる程度の工作レベルの簡単な試験)を行い、その有効性を確認します。これによって不具合が発生するなら、その仮説を有効な仮説とみなすことができます。
自社の専門分野の問題であれば、問題発生のメカニズムがわかってしまえば、解決案を出すことはそれほど難しくないはずです。
解決策が出せないのは、問題発生のメカニズムがわからない場合がほとんどでしょうから、問題解決に取り組むうえで不具合分析(FA)で問題発生のメカニズムを明らかにすることが重要なのです。