ものづくりプロセスに不可欠な不具合予測(FP)

アイディエーション・インターナショナル社が開発した不具合予測(FP:Failure Prediction)は、革新的なものづくりプロセスにはなくてはならない手法であると考えます。
I-TRIZでは「結果の評価」という名の下に、当初の問題の解決案に関連して新たに生じる二次的問題を解決する段階が設けられていますが、「不具合の予測と予防」はその二次的問題の一つと考えることができます。
そして、この二次的問題についての解決策を求めることで、当初の解決策の実現性を高めることになります。
ブレーンストーミングのような方法で「気がつかないようなどんな不具合が起こるだろうか」と考える代わりに、次のテンプレートを使って、問題を逆転させて不具合を故意に引き起こす、あるいは、可能な不具合を「発明する」ことを試みます。
以下に、不具合予測(FP)の基本的な手順を示します。
ステップ1.問題を逆転させる
新たな改良(変更)を加えることによって生ずるかもしれない不具合を推測する代わりに、 問題を逆転させ、不具合を能動的に作り出すことを考えます。
具体的には、次のテンプレートを用います。
[対象システム名]および/またはその環境で、考えうるすべての不具合を[新たな改良(変更)] を用いて発生させなさい。
角括弧[ ]内の指示に従って、言葉を置き換えます。初めの括弧には対象システム名、次の括弧には、導入しようとしている(した)新たな変更点を記入してテンプレートを完成させます。
ステップ2.システムの因果関係ダイヤグラムの作成
当初の問題の解決案が実現するまでの過程で起こるすべての事象をリストアップします。
具体的には、最初に、システムがどのように機能するかを示す因果関係ダイヤグラム1を作成します。
ステップ3.焦点の特定と不具合仮説の作成
システムの機能の焦点、つまり、システムにおいて要点となる(弱いまたは危険な)機能/作用/状態(通常複数)を選択します。因果関係ダイヤグラム1を眺めながら、焦点の事象に関連して引き起こすことが可能な不具合の仮説を、次の各項目を参照しながら考えます。
(1)専門分野の経験と知識を駆使して、リストの事象の結果として明らかに生じる可能性のある不具合や有害な影響をリストアップしてください。
(2)「弱いゾーン・危険なゾーン」で起こすことができる不具合を考えてください。
(3)「装置や物などに関連して予測される不具合」を考えてください。
(4)「解決策を実現に移すそれぞれの段階で予想される有害な影響/作用」を考えてください。
(5)「潜在的に危険な瞬間/期間」について考えてください。
ステップ4.不具合のシナリオの作成
不具合のシナリオを書くには、不具合の仮説を一つずつ検討します。それぞれについて、
(1)最も危険な不具合を引起す不具合の仮説に基づいて、より複雑な不具合のシナリオを書くために、仮説を更に複雑に、あるいは危険なものとすることが出来ないか考えて下さい。
(2)複数の「不具合の仮説」を結び付け、より複雑な「不具合のシナリオ」へとまとめ、不具合の相互作用により生じ得る結果も記入します。
(3)こうして得た「不具合のシナリオ」をそれぞれ記録します。
この段階では、アイディエーション・インターナショナル社が作成した「不具合を起こすためのオペレータ」(知識ベース)を使って不具合のシナリオを作成します。その結果、複数の不具合のシナリオ(不具合発生メカニズム)が考えられます。
ステップ5.不具合発生の可能性を確認する
次に、複数の不具合シナリオを、非常に危険な不具合と非常に危険ではない不具合に分類し、それぞれについて発生の可能性を確認します。
不具合発生の可能性は、まず、その不具合を発生させるのに必要な要素をすべてリストアップします。次に、その不具合が生じるために不可欠な要素が資源として実際に存在するかを確認します。
ステップ6.発見した不具合を予防する対策の検討
発生の可能性が高いことが確認された不具合シナリオのうち、非常に危険な不具合について不具合の予防策を考えます。以下、不具合発生の可能性と危険度の高いものから順に、その予防策を考えていきます。
不具合を回避する理想的な方法は、その原因を取り除くことです。しかし、さまざまな理由からこれを行うのが不可能な場合があります。
例えば、費用がかかり過ぎる、手遅れ、変更のためには他社などの同意が必要といった具合です。いずれの場合も、不具合の原因を取り除くのと、その結果を是正するのとどちらがより良いか決定しなくてはなりません。
潜在的不具合の予防策は、対策を要する不具合のシナリオのすべてについて、それぞれに対応する不具合の因果関係ダイヤグラムを作って行います。
具体的には、アイディエーション・インターナショナル社が作成した「不具合を是正するオペレータ」と呼ばれるブレークスルーのための知識ベースを使って予防策のアイデアを考えます。
不具合予測(FP)は、いわば設計品質の保証作業を行うことに相当します。つまり、現在時点で製品の未来の品質を管理することです。
なお、この考え方を知的財産の分野に採用すると、発明者から提案された発明を第三者から真似され難い権利に育てることができます(これを知的財産制御(CIP)では発明強化という)。
発明強化では、発明者から提案された発明の潜在的な不具合を予測して、その不具合が発生しないようなアイデアを追加することを考えることになります。