皆さんの近くに、管理技法から発想技法まで、問題解決に役立ちそうな手法・技法を片っ端からつまみ食いをしている手法・技法マニア(以下、単にマニアといいます。)がいませんか。
マニアがTRIZの社内担当になると、TRIZが社内に普及することはありません。
マニアの特徴は、上に対しては「自分はまだ勉強中なのでアイデアを出すことができません。」といい、下に対してはアイデアを出すための方法といって「自分がよく理解していない書籍やセミナーで得た知識」を押し付けます。
マニアは、自ら実務問題(解決することで顧客から対価をいただく問題)についてTRIZを使ったことがないため、質問されても教科書的な答えしかしません。
わけのわからない手法・技法は誰も使いたくありませんので、マニアから指導を受けた方は、それ以降TRIZを実務に使用することありません。
マニアからアイデア発想の訓練を受ける方は不幸としかいいようがありません。
マニアが上に対して問う質問は、決まって「成功事例を教えてください。」です。なぜなら、自分では成功事例を作れないから。
マニアは他社の成功事例がないと上を説得できないといい、実務問題についてTRIZ専門家のコンサルを受けたり、TRIZのソフトウェアを導入することはありません。
そのため、マニアが指導するTRIZの訓練は「矛盾マトリックスと発明原理」程度のワークシートを使えばできる簡単な手法だけでお茶を濁すことで終わっています。
それでは、従来の○○法と同じレベルの結果しか出ませんので、他の手法・技法と同様にTRIZは使えないという烙印が押されてしまいます(どこかで聞いたことありませんか?)。
これではTRIZが可哀そうです。
TRIZを普及させようとしているTRIZ担当者が、実はTRIZを駄目にするTRIZキラーになっていることがないでしょうか。
TRIZ担当者がTRIZキラーにならないようにするには、手法やツールに振り回されないようにすることです。TRIZの手法やツールを一生懸命勉強するより、TRIZの基本的思想をよく理解することの方が実務問題を解決する早道です。
マニアは上に対して重箱の隅をつつくような質問をします。そして、上からどんな回答をもらっても納得することはありません。その方が、自分を納得させるためにも、下を指導するのに都合がよいからです。
「TRIZは難しいものなので、そう簡単には理解できるものではない」といことにしておけば、下の人を納得させる指導ができないときの責任逃れができるからです。その方が、本人にとっても精神衛生上好ましいからです。
マニアは自分が納得できないものは、下の人もわからないと思い込んでいます。
マニアの典型的な傾向は、人間の心理的惰性を排除することの重要性を謳っているTRIZを使っているにもかかわらず、TRIZの個別の手法やツールの厳密性に拘るあまり、反って思考の幅を狭くしてしまっていることである。
たとえば、「この指針や推奨文に従うと、出せるアイデアが限られてしまう。」という批判をいう人がいますが、本末転倒ではないかと思います。指針や推奨文は、あくまでも問題解決のための一つの手段を提供してくれていると考えれば、それらの意味を厳密に捉えることに固執する理由はないでしょう。
「そういうこともいえるよね。」くらいの柔軟性をもった受け止め方をしないと、出るはずのアイデアも逃げて行ってしまうのではないでしょうか。
より重要なことは、(1)問題解決とは理想性(有益機能の総和/有害機能の総和)を高めることである、(2)問題解決とは資源(問題解決に役立つ要素:物質資源、エネルギー資源、空間資源、時間資源、情報資源、機能資源)に何らかの変更を加えることである、といった点を押さえておくことです。それにより、指針や推奨文をどの資源に適用すればよいかがわかるため、自然にアイデアが出ることになります。
ちなみに、矛盾を解決することがTRIZの基本的な概念であるといわれていますが、実務問題には矛盾を解決しなくとも、有害機能を排除・軽減したり、有益機能を改良することで十分な場合もあります。そのような場合にもTRIZは有効です。