問題には日常業務の改善といった簡単なものから、次世代の商品・サービスの企画といった大掛かりなものまであります。
ここでは、次世代の商品・サービスの企画を例にして、因果関係ダイヤグラムの使用場面とその種類について説明します。
次世代の商品・サービスの企画では、そもそもプロジェクトの目的についての検討が重要な要素です。そのため、最初にプロジェクトが置かれた状況について検討します。
1.プロジェクトが置かれた状況を表すダイヤグラム
プロジェクトに関係するシステム(複数かもしれません)、プロジェクトに求められる要件、プロジェクトに課せられた制約、プロジェクトの目標を確認し、プロジェクトが置かれた状況をダイヤグラムにして、プロジェクトの狙いを変更する必要がないか検討する。
その際に、プロジェクトの狙いをより現実的なものとする必要は無いか、プロジェクトの狙いと「上位システム」(上位部門、会社全体、など)が目指す目的との整合性を高める必要はないか、を確認する。
2.対象システムの進化の経緯を表すダイヤグラム
(1)システムの進化を促進する要因、システムの進化を阻害する要因、システムの進化の限界や制約条件、(2)進化の歴史の中の主な出来事と出来事同士の間の関係、(3)システムの進化に関係する諸問題に着目して、対象システムの進化の状況を表したダイヤグラムを描く。
3.上位システムの進化を表すダイヤグラム
(1)上位システムの進化について、主な促進要因、阻害要因、制約条件、(2)上位システムの進化に関連する主な出来事とその相互関係、(3)上位システムの進化に関連する問題・課題に着目して、対象システムと様々な上位システムとの間の関係をダイヤグラムに描く。 たとえば、自動車の上位システムには、自動車産業、輸送システム、自動車販売、個人あるいは組織の資産、交通関連制度体系、余暇、安全などが含まれます。
4.市場の進化を表すダイヤグラム
(1)顧客、(2)販売(販売網、販売体制、セールスマンなど)、(3)競争相手、(4)関係する他の企業(金融、監査、保険、安全保障、その他)、(5)政府・官庁(税、規制など)、(6)関係する社会集団、組織などが対象とする市場にどのような要因・問題となって影響してくるかを考察して、市場の特性を把握した上で、事業形態(投入・活用する資源が最終的に利益へと形を替える仕組と考えることができます)を表すダイヤグラムを描く。
5.進化を阻害する要因を表したダイヤグラム
あなたが対象としているシステムに関係のある様々な上位システムのそれぞれについて、その上位システムが代償システムに押し付けている阻害要因と制約を確認し、対象システムの進化の促進要因と阻害要因や制約の関係をダイヤグラムに描く。
一般的な阻害要因としては、(1)競争の圧力、(2)マーケティング上の問題、(3)技術的限界、(4)心理的・社会的問題、(5)経済的な限界、(6)環境に関連する制約、(6)安全面での制約などが考えられます。
主な制約や問題点と、それぞれを克服・解決するために取ることのできる手段をリストアップすることによって、(1)当該のシステムの次世代のシステムが目指す方向性の選択、(2)プロジェクトが進行した段階で得られるアイデアや方策案の有効性の評価、といったことが可能になります。
6.有益機能を表したダイヤグラム
システムはどのような有益機能をもっているか、また、それぞれの機能はどういう位置づけに分類されるかを考えて、システムの様々な有益機能の状況をダイヤグラムに描く。 有益機能には、(1)基本機能:システムが作られた目的となっている機能(乗用車の基本機能は人を移動させることです)、(2)補助機能:基本機能が実現するようにする機能(乗用車の補助機能:操行、変速など)、(3)付属機能:基本機能に追加される機能(乗用車の付属機能:ラジオの受信、空調)といった種類があります。
7.有害な要因(有害機能)を表したダイヤグラム
システムの機能と有害な結果との関係をダイヤグラムに描く。 有害な要因には、(1)材料、生産、維持、使用、修理、排気などの、直接の費用、(2)システムが存在することに関係する間接的な費用(設置場所、再生不能な資源の消費、事故、環境への悪影響、など)があります。
8.機能間の矛盾を表したダイヤグラム
有益機能を表したダイヤグラムと有害な要因(有害機能)を表したダイヤグラムを組み合わせることで、対象システムの有益な機能と有害な影響との関係を表したダイヤグラムを描く。 ダイヤグラムから読み取ることのできる機能間の矛盾は、以下の様式に沿って表現することができます。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、他の有益機能 [有益機能の内容を書く] を妨げる。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、有害機能 [有害機能の内容を書く] が生じる原因である。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、システム自身に対して有害な影響[有害な影響の内容を書く] を与える。
次世代の商品・サービスの企画といった大掛かりな問題を扱うDE(Directed Evolution)プロジェクトの場合には、以上のような多くの因果関係ダイヤグラムを作成することになります。
ちなみに、一般的な技術問題の解決を目的とするIPS(Inventive Problem Solving)プロジェクトであれば、最後の機能間の矛盾を表したダイヤグラムだけで解決策を考え出すことができます。