「人間にとっての一般的なニーズの進化」とその利用

I-TRIZには、次世代の商品やサービスを企画したり新規事業の構想案を作成するための戦略的世代進化(DE:Directed Evolution)という手法があります。
戦略的世代進化(DE)の特徴は、I-TRIZの他の手法と違って社会、市場、組織、経営といった技術以外の分野も対象にしている点です。
たとえば、人間にとっての価値創造といった漠然とした問題を扱う場合には、マーケティングの分野で重要とされているニーズについての検討から始めます。
進化を促す力の中でも最も重要な要素は社会のニーズ(進化を牽引する要因)です。社会のニーズは市場の反応や、影響力のある人物、あるいは、組織の意思表示といった形で表面化します。
文明が進化してきた過程で、ニーズは自然に出現し、現れたニーズは人工システムの進化と同じパターンに沿って変化してきました。
ニーズとそのニーズを充足する手段とは相互に影響を与えて雪崩現象ともいえるプロセスが発生します。たとえば、あるニーズがあることが認識されると、それを充足させる方法を発見することへの関心が高まります。
こうした方法は進化のパターンに従って進化して、それがまたニーズを大きくし、ニーズそのものを進化させます。次には、こうして増大したニーズがそれを充足する手段と、その生産量に影響をあたえる、といった具合です。
またそれとは逆に、ある技術的可能性(たとえば電子による加熱)が発見されると、これを使えば既存のニーズを充足させることができるということが認識されたり、あるいは、新らしいニーズが形成されて、それによって、技術システムが変化し洗練されることに繋がることがあります。
アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化した「マズローの欲求段階説」は有名です。
マズローによれば、人間の基本的欲求を低次から述べると、(1).生理的欲求、(2)安全の欲求、(3)所属と愛の欲求、(4)承認(尊重)の欲求、(5)自己実現の欲求、の順であるという。このマズローの欲求段階説は人のニーズを考える際の基準となります(ウィキペディアの「自己実現理論」の項目より)。
人のニーズが充足されてきた歴史を振り返ると、当初は全く生理的ニーズだけが問題とされていた段階から、やがてより高次のニーズへと一歩一歩進化してきたといえます。
個人の生涯を通じてニーズが変化してゆく過程も歴史的な進化とほぼ同じことが繰り返されます。より高次なニーズが生じるための主な条件は、それより低いレベルのニーズが少なくとも多少は充足されていることです。
(1)生理的ニーズとしては、①食べ物、水、呼吸、身体を動かすこと、休息、性、など、②健康で快適な環境、住居、家具、衣類、など、③感覚的ニーズの充足、新鮮さや感動を感じられること、④身体的、精神的健康、などがあります。
(2)安全(存在)のニーズとしては、①自由、安全の保障、自分自身の行動や仕事を自分で判断できるという感覚。同時に、誰かが自分の心配をしてくれている、助けてもらえる、誰かが責任をとって護ってくれているという感覚、②生きてゆくうえでの安定した条件と将来に対する安心感。自分を取り巻く世界、事象、人々について十分に情報を得ているという感覚、③自分が持っている認識(体系)の中に不調和(明らか矛盾や不一致)が存在しないこと、などがあります。
(3)所属と愛(社会的)ニーズとしては、①家族、友人、他の人々との関係の維持と保護、②何らかのコミュニティー、他の人々との係累に属していること、③権力、高い地位、階層的昇進、義務、順応への願望、④他の人々の面倒を見たい、他の人々に心配されたいという願望、⑤尊敬を受けたい、自尊心を持つ権利、名誉・栄光・著名な人に認められたいという願望、虚栄、見栄、⑥倫理的行為、道徳的規範遵守への願望、があります。
(4)承認(精神的)ニーズとしては、①物見高さ、知的好奇心、学びたい、知識を得たいという願望、②他のニーズを充足させる欲求をやわらげるゲームへの志向、③リスクへの欲求、リスク、抗争、障害の克服を通じた自己確認の欲求、④新規さ、変化、自己改善、世界の改良への願望、⑤自己表現、創造を通じた研鑽への願望、などがあります。
(5)自己実現ニーズとしては、①親しい人びと(子供、親族)、②同じコミュニティーの人びと、宗教的同胞、③人間一般、④文化、科学、芸術、⑤何らか特定の目的、⑥ペット、他の動物、環境保全、などがあります。
以上のようないくつかのニーズは、お互いに矛盾することがあります。どちらのニーズが優先されるかは人の心理や育ってきた文化的環境によって左右されますが、その矛盾を解決することが進化の方向ということになります。
戦略的世代進化(DE)では、「個人におけるニーズの進化」として、基本的なニーズの充足が進む状況(進化の段階)を以下のようにまとめています。
(1)既知のニーズの増大と詳細化
(2)隠れたニーズの表面化(例:身体がビタミンを求める)
(3)従来存在しなかった新しいニーズの発明(例:自然な体臭を消したい)
(4)何らかのニーズの他のニーズによる代償(例:激しい権力欲をスポーツでの勝利への願望によって代償)
(5)教育、成長・老化、地位の変化などに伴うニーズの変化、変容
(6)ニーズの標準的な水準からの変動-しばしば流行や社会における状況変化に伴う
(7)ニーズの充足に関連する正のフィードバック(悪循環)の発生と結果としての過剰消費
(8)ニーズの充足に関連する矛盾の発生と解消(ある一人の個人が持つ異なるニーズの間の矛盾と、異なる人びとのニーズの間の矛盾)
(9)人々あるいは社会に有害なニーズの充足に対する反作用
(10)何らかのニーズの充足に伴う有害な結果を排除する方法の創出
(11)進化の過程における何らかのニーズの消滅
ここで、最後の「ニーズの消滅」についていえば、ニーズの対象がなくなることでその対象に対するニーズが弱まり、いずれは消滅することが考えられます。
たとえば、ある高校生が県大会の出

TRIZの使命と戦略的世代進化(DE)

TRIZが他の発明技法といわれるシネクティクス、等価変換理論、NM法などと違うのは、(1)イノベーションのための知識ベースを有していること、(2)システム進化の法則を活用した未来を制御する手法を有していること、の2点です。
私たちは、組織、会社、国が成功のために未来に備えたいと考えています。
アメリカの社会学者のアルヴィン・トフラーは1980年に「第三の波」という著書で発表した、情報化社会の波は、人類の運命を制御しようとする波です。
人類が自らの未来を制御するという波は、自分たち自身の進化やその環境の進化を制御するというものです。
誰もが自分の未来を支配する者になりたいと望んでいるし、あらゆる会社が将来の成功を保証することを必要としており、すべての国が成功、安定、安全を欲しています。未来を制御することは普遍的な必要性といえます。
技術の進化は、一方では、技術的な進展が人類のパワーを高めるので、自然や慣らされていない要素による危険性を減らしますが、他方では、人類自体の中での危険性を高めます。
技術が多くの知識や発明を蓄積すればするほど、新しい知識や発明の現れるペースが速くなります。制御されていない肯定的なフィードバックを伴うプロセスが、常にそのプロセスの存在するシステムを不安定にさせ、やがては、そのシステムの枯渇、悪化、または完全な崩壊をもたらすというのが一般的な認識です。
この危険な進化を止めようとするのは意味のないことです。長い歴史の中で進歩を止めることができた者などいません。進化は止めてはなりません。進化は制御し、方向づけるべきなのです。それが、I-TRIZの基本的な考えになっています。
TRIZは人類の歴史において進化の制御を可能にした最初の手段といえます。これは、I-TRIZの中の戦略的世代進化(DE:Directed Evolution)と名付けられたTRIZベースのアプローチを通して実現されます。

派生する資源を活用するためのオペレータ

前回I-TRIZでは、「システムアプローチでシステムおよびその周辺に存在する資源を抽出したら、抽出した資源を変更することで問題が解決できないかと考えます。」という説明をしました。

 

また、資源には、現状のまま使用できる資源(存在する資源)と、何らかの変更処理の後で使用できる資源(派生する資源)とがあることを説明し、6つの存在する資源について問題を解決するために適用する推奨事項(オペレータ)を紹介しました。

 

今回は「派生する資源」を活用する推奨事項(オペレータ)を紹介します。

 

派生する資源とは、何らかの変更処理の後で使用できる資源のことですので、変更処理の内容がわからなければ具体的な派生する資源を認識することは勿論、イメージすることもできません。この点が存在する資源と派生する資源との違いになります。

 

他人が気づいていない「存在する資源」で問題解決の有効なものが見つかれば、他人が簡単には思いつかない解決策が得られる可能性が高いことになります。

 

直接認識することができない新たに考え出した「派生する資源」を活用した解決策の場合は、さらに革新的な解決策になる可能性が高いことになります。

 

派生する資源を活用するには、以下のような推奨事項(オペレータ)を参考にします。

(1)派生する物質資源
物質資源にはシステム、およびその環境を構成するあらゆる種類の物質が含まれます。使用可能な派生後の物質資源を活用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を考慮してください。

    1. 廃棄物の変質
      物質を追加する場合は、廃棄物を変質させて必要な物質にした方がよい場合もあります。

    2. 素材または製品の変更
      物質を追加する必要がある場合は、未加工な材料、未完成品、または完成品に変更して、その物質を追加した方がよい場合もあります。

    3. 他の物質への変更

物質を追加する必要がある場合はシステム、または環境に既に存在する物質に変更して、その物質を追加した方がよい場合もあります。

  • 水処理

 

水は比較的安価で手軽に利用できるので、資源として活用する上でその特性を変更させることを検討してください。

(2)派生する場の資源
直接利用できる場の資源がない場合は、派生する場を適用してください。これらの資源は、使用可能な場(エネルギー)、作用を変化させることによって得られます。
以下の推奨事項(オペレータ)を考慮してください。

    1. システムから既存の場を変換

場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、システム内の既存の場を変換して、必要な場にする方がよい場合もあります。

  • 周辺環境から既存の場を変換

 

場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、環境内の既存の場を変換することを検討してください。

  • システム発生源から場を変換

 

場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、システム内の既存の物質から生成される場を検討してください。

(3)派生する時間資源
システム、またはプロセスの処理時間が不足している場合は操作、またはプロセスの加速、減速、中断、または継続を検討してください。

 

(4)派生する機能資源
場(システムまたはプロセス)、またはその一部によって既に実行されている便利な機能を変換して、新しい機能を達成することを検討してください。

 

(5)派生する資源の蓄積
利用可能な資源の量が不足している場合は、必要量を蓄積することを検討してください。

 

(6)派生する資源の集中
利用可能な資源が不足している場合は、資源を集中させ、必要に応じて適用量を利用することを検討してください。

システムアプローチで使用するオペレータ

問題を解決しようとするときには、ほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えます。しかし、経験を積んだ技術者は以下を視野に入れて問題を多角的に捉えようとします。

 

システムアプローチとは、超一流の技術者の思考を真似るための方法といえます。

 

システムアプローチは問題状況の予備的分析の段階で使用し、(1)システムの階層、(2)時間、(3)問題、(4)機能の4つの観点から問題状況を体系的に分析するために実施します。

 

(1)システムの階層という観点では、システム、システムの構成要素である下位システム、およびシステムに関連する上位システムを観察します。

 

(2)時間という観点では、システム、下位システム、および上位システムそれぞれの過去の、ならびに、予想される未来を観察します。

 

(3)問題という観点では、問題の原因、問題の結果として生じる不都合、および、これらに関連する問題との関係を観察します。

 

(4)機能という観点では、システムに対する様々な入力、システムからの出力、これらに関連するシステムの機能との関係を観察します。

 

システムの階層、時間、問題、機能の4つの観点からシステムが抱えている問題状況を分析する目的は、問題を解決するために変更できる可能性のある資源を見つけることです。

 

資源とは、システムおよびその周辺に存在する物質、場(エネルギー)、特性、機能などであり、システムの改善に活用できるものです。資源には、現状のまま使用できる資源(存在する資源)と、何らかの変更処理の後で使用できる資源(派生する資源)とがあります。

 

存在する資源には、(1)物質資源、(2)場の資源、(3)空間資源、(4)時間資源、(5)情報資源、(6)機能資源の6種類があります。

 

資源に手を加えない限り、システムの問題状況を変えることはできません。したがって、問題を解決するには、システムに関係する資源を変更することが必要になります。

 

問題解決とは、「どの資源をどのように変更するか」を決定することです。

 

また、「技術システムは理想性が増加する方向に進化する」というのがTRIZの基本的な認識ですので、問題解決とは「システムの理想性を高めること」であるともいえます(「理想性」とは、システムに含まれる有益機能の総和と有害機能の総和の比率であると定義されるものです)。

 

つまり、問題を解決するには、「資源を活用してシステムの理想性を高める」ことを考えればよいことになります。

 

I-TRIZでは、システムアプローチでシステムおよびその周辺に存在する資源を抽出したら、抽出した資源を変更することで問題が解決できないかと考えます。

 

実際には、以下のとおり、6つの資源についてソフトウェアから提示される推奨事項(オペレータ)に沿って具体的な検討をしていくことになります。

 

(1)物質資源
物質資源には、システム、およびその環境を構成するあらゆる種類の物質が含まれます。
使用可能な物質資源を活用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。

 

    1. 廃棄物

 

  • 素材・未完成品

 

 

  • システム要素

 

 

  • 安価な物質

 

 

  • 物質の流れ

 

 

  • 物質特性

 

 

 

(2)場の資源
場の資源にはシステム、またはその周辺に存在していて使用可能なあらゆる種類の場が含まれます。
Ideation社の問題解決技法では、対象物同士が互いに発するあらゆる種類の作用を場と定義しています。物的な場(重力場、電磁場、および2つの核作用場の4つのみ)とは対照的に、Ideation社の技法では更に多数の場(機械的場、熱場、化学場、電気場、磁場、および電磁場(放射の場))を考案し、活用しています。システムや環境内で使用可能なあらゆる種類のエネルギ、作用、力などは、既に存在する利用可能な場の資源とみなすことができます。
場の資源が必要な場合は、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。

 

    1. システム内の場 (エネルギ)

 

  • 周辺環境の場 (エネルギ)

 

 

  • 場の提供者

 

 

  • 放出される場(エネルギ)

 

 

 

(3)空間資源
空間資源には、システムまたはその周辺にある自由な非占有空間が含まれます。この空間は、新しいオブジェクトを配置する際に使用できます (空間の節約や空間の制限をするため)。

 

使用可能な空間資源を利用するには、以下の推奨事項 (オペレータ) を考慮してください。

 

    1. 空間の占有

 

  • 他次元の活用

 

 

  • 垂直方向に配置

 

 

  • 反対側の活用

 

 

  • 入れ子(マトリョーシュカ)

 

 

  • すき間を通過

 

 

 

(4)時間資源
時間資源には技術上のプロセスで繰り返されるサイクル、最初から、最後までに発生する部分的または完全に利用されていない時間を含みます。
以下の利用可能な時間資源を参照してください。

 

    1. 事前の処理(作用)

 

  • 部分的な事前の処理(作用)

 

 

  • 事前の配置

 

 

  • 処理の中断

 

 

  • 無駄な運動の排除

 

 

  • 後処理の時間を活用

 

 

  • グループ処理

 

 

  • 時間をずらす

 

 

  • プロセスの後の時間

 

 

 

(5)情報資源
情報資源にはシステムから放射される場、あるいはシステムを通り抜けるものや場から知ることができるシステムに関する追加情報も含まれます。
既存の情報資源を利用する方法を見つけるには、以下の推奨事項(オペレータ)に沿って考えてください。

 

    1. 放出エネルギ(場)

 

  • 物質特性

 

 

  • システムから出る物質

 

 

  • 通過する物質・場の流れ

 

 

  • 物質特性の変化

 

 

 

(6)機能資源
機能資源には、本来の機能に加えて機能するシステムやその周辺機能が含まれます。その特別な効果は、技術革新の結果として生じる、通常は期待しない付加価値といえます。
既存の機能資源を利用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。

 

    1. 資源-機能

 

  • 資源-潜在機能

 

TRIZキラーにはならないように

皆さんの近くに、管理技法から発想技法まで、問題解決に役立ちそうな手法・技法を片っ端からつまみ食いをしている手法・技法マニア(以下、単にマニアといいます。)がいませんか。
マニアがTRIZの社内担当になると、TRIZが社内に普及することはありません。
マニアの特徴は、上に対しては「自分はまだ勉強中なのでアイデアを出すことができません。」といい、下に対してはアイデアを出すための方法といって「自分がよく理解していない書籍やセミナーで得た知識」を押し付けます。
マニアは、自ら実務問題(解決することで顧客から対価をいただく問題)についてTRIZを使ったことがないため、質問されても教科書的な答えしかしません。
わけのわからない手法・技法は誰も使いたくありませんので、マニアから指導を受けた方は、それ以降TRIZを実務に使用することありません。
マニアからアイデア発想の訓練を受ける方は不幸としかいいようがありません。
マニアが上に対して問う質問は、決まって「成功事例を教えてください。」です。なぜなら、自分では成功事例を作れないから。
マニアは他社の成功事例がないと上を説得できないといい、実務問題についてTRIZ専門家のコンサルを受けたり、TRIZのソフトウェアを導入することはありません。
そのため、マニアが指導するTRIZの訓練は「矛盾マトリックスと発明原理」程度のワークシートを使えばできる簡単な手法だけでお茶を濁すことで終わっています。
それでは、従来の○○法と同じレベルの結果しか出ませんので、他の手法・技法と同様にTRIZは使えないという烙印が押されてしまいます(どこかで聞いたことありませんか?)。
これではTRIZが可哀そうです。
TRIZを普及させようとしているTRIZ担当者が、実はTRIZを駄目にするTRIZキラーになっていることがないでしょうか。
TRIZ担当者がTRIZキラーにならないようにするには、手法やツールに振り回されないようにすることです。TRIZの手法やツールを一生懸命勉強するより、TRIZの基本的思想をよく理解することの方が実務問題を解決する早道です。
マニアは上に対して重箱の隅をつつくような質問をします。そして、上からどんな回答をもらっても納得することはありません。その方が、自分を納得させるためにも、下を指導するのに都合がよいからです。
「TRIZは難しいものなので、そう簡単には理解できるものではない」といことにしておけば、下の人を納得させる指導ができないときの責任逃れができるからです。その方が、本人にとっても精神衛生上好ましいからです。
マニアは自分が納得できないものは、下の人もわからないと思い込んでいます。
マニアの典型的な傾向は、人間の心理的惰性を排除することの重要性を謳っているTRIZを使っているにもかかわらず、TRIZの個別の手法やツールの厳密性に拘るあまり、反って思考の幅を狭くしてしまっていることである。
たとえば、「この指針や推奨文に従うと、出せるアイデアが限られてしまう。」という批判をいう人がいますが、本末転倒ではないかと思います。指針や推奨文は、あくまでも問題解決のための一つの手段を提供してくれていると考えれば、それらの意味を厳密に捉えることに固執する理由はないでしょう。
「そういうこともいえるよね。」くらいの柔軟性をもった受け止め方をしないと、出るはずのアイデアも逃げて行ってしまうのではないでしょうか。
より重要なことは、(1)問題解決とは理想性(有益機能の総和/有害機能の総和)を高めることである、(2)問題解決とは資源(問題解決に役立つ要素:物質資源、エネルギー資源、空間資源、時間資源、情報資源、機能資源)に何らかの変更を加えることである、といった点を押さえておくことです。それにより、指針や推奨文をどの資源に適用すればよいかがわかるため、自然にアイデアが出ることになります。
ちなみに、矛盾を解決することがTRIZの基本的な概念であるといわれていますが、実務問題には矛盾を解決しなくとも、有害機能を排除・軽減したり、有益機能を改良することで十分な場合もあります。そのような場合にもTRIZは有効です。

I-TRIZの汎用性

1950年代半ば頃アメリカから導入され、日本企業の製造原価低減活動に広く適用され、日本企業の高度成長に大きく貢献したVE(Value Engineering:価値工学)という技法があります。
日本で発行されているVE(Value Engineering:価値工学)に関する書籍のほとんどは、VEで取り扱う価値の概念として「価値=機能/コスト」という公式が記載されています。
しかしながら、この公式はVA(Value Analysis:価値分析)の創始者のマイルズが提唱したものではなく、アメリカ国防総省によって制定された公式に始まるとされ、その価値公式は「Value Index(価値指数)=Worth(値打ち)/Cost=Utility(効用)/Cost」というものを提示しているとのことです(「市場価格対応の品質展開実践手法」、持本志行著、(株)日科技連出版社発行)。
日本の「価値=機能/コスト」というVEの公式は、日本企業への普及に努めた産能短大の当事者がアメリカ国防総省の価値公式の分子を単に「機能」と略称し、アメリカVE協会もこれをまねて、それを再輸入した日本VE協会がこれを再確認し、VE公式「価値=機能/コスト」が同協会のマニュアルなどに定着した(「市場価格対応の品質展開実践手法」、持本志行著、(株)日科技連出版社発行)、とされています。
マーケティングの世界では、「顧客はモノが欲しいのではなく、そのモノが実現する機能が欲しいのである。」といわれます。
アメリカ国防総省が単なるモノの機能ではなく、モノの機能の値打ち(価値評価額)を問題にしていたわけです。
現在のマーケティングでは機能の先にある「顧客価値」を問題にしていますが、アメリカ国防総省はこの概念を先取りしていたわけです。
同じような考え方を取り扱う技法でも、その概念の定義の仕方や捉え方によって、生まれる成果が大きく異なることを教えてくれる案件といえるでしょう。
TRIZの基本的な考え(発見)として、「技術システムは理想性が増加する方向に進化する」という概念があります。ここで、理想性については「理想性=有益機能の総和/有害機能の総和」との公式で表現されます。
そのため、システムの有益機能を改良・増加する一方で、有害機能を排除・軽減するといった「矛盾を解決する」方法がTRIZの問題解決の方法であるとされています。
I-TRIZでは問題解決という概念をより広く捉えています。
たとえば、分母である有害機能に着目して理想性が増加する方向を考えると、システムはより小さく、コストはより少なく、エネルギー効率はより良く、環境破壊はより少なくなる、などが進化の方向であると考えます。
また、分子である有益機能に着目して理想性が増加する方向を考えると、有益機能を現在より向上させることや従来と違う方法で同じ有益機能を実現することも、進化の方向であると考えます。
実際の現場では、敢えて難しい矛盾を解決することに取り組まなくとも、問題解決できるケースがたくさんあります。
I-TRIZでは、問題解決を(1)有害機能の排除・軽減・防止、(2)有益機能を得る他の手段、改良、(3)矛盾の解決、といった3つの観点で捉えますので、実際の現場の状況に合った効率的な問題解決を実現することができることになります。

ものづくりプロセスに不可欠な不具合予測(FP)

アイディエーション・インターナショナル社が開発した不具合予測(FP:Failure Prediction)は、革新的なものづくりプロセスにはなくてはならない手法であると考えます。
I-TRIZでは「結果の評価」という名の下に、当初の問題の解決案に関連して新たに生じる二次的問題を解決する段階が設けられていますが、「不具合の予測と予防」はその二次的問題の一つと考えることができます。
そして、この二次的問題についての解決策を求めることで、当初の解決策の実現性を高めることになります。
ブレーンストーミングのような方法で「気がつかないようなどんな不具合が起こるだろうか」と考える代わりに、次のテンプレートを使って、問題を逆転させて不具合を故意に引き起こす、あるいは、可能な不具合を「発明する」ことを試みます。
以下に、不具合予測(FP)の基本的な手順を示します。
ステップ1.問題を逆転させる
新たな改良(変更)を加えることによって生ずるかもしれない不具合を推測する代わりに、 問題を逆転させ、不具合を能動的に作り出すことを考えます。
具体的には、次のテンプレートを用います。
[対象システム名]および/またはその環境で、考えうるすべての不具合を[新たな改良(変更)] を用いて発生させなさい。
角括弧[ ]内の指示に従って、言葉を置き換えます。初めの括弧には対象システム名、次の括弧には、導入しようとしている(した)新たな変更点を記入してテンプレートを完成させます。
ステップ2.システムの因果関係ダイヤグラムの作成
当初の問題の解決案が実現するまでの過程で起こるすべての事象をリストアップします。
具体的には、最初に、システムがどのように機能するかを示す因果関係ダイヤグラム1を作成します。
ステップ3.焦点の特定と不具合仮説の作成
システムの機能の焦点、つまり、システムにおいて要点となる(弱いまたは危険な)機能/作用/状態(通常複数)を選択します。因果関係ダイヤグラム1を眺めながら、焦点の事象に関連して引き起こすことが可能な不具合の仮説を、次の各項目を参照しながら考えます。
(1)専門分野の経験と知識を駆使して、リストの事象の結果として明らかに生じる可能性のある不具合や有害な影響をリストアップしてください。
(2)「弱いゾーン・危険なゾーン」で起こすことができる不具合を考えてください。
(3)「装置や物などに関連して予測される不具合」を考えてください。
(4)「解決策を実現に移すそれぞれの段階で予想される有害な影響/作用」を考えてください。
(5)「潜在的に危険な瞬間/期間」について考えてください。
ステップ4.不具合のシナリオの作成
不具合のシナリオを書くには、不具合の仮説を一つずつ検討します。それぞれについて、
(1)最も危険な不具合を引起す不具合の仮説に基づいて、より複雑な不具合のシナリオを書くために、仮説を更に複雑に、あるいは危険なものとすることが出来ないか考えて下さい。
(2)複数の「不具合の仮説」を結び付け、より複雑な「不具合のシナリオ」へとまとめ、不具合の相互作用により生じ得る結果も記入します。
(3)こうして得た「不具合のシナリオ」をそれぞれ記録します。
この段階では、アイディエーション・インターナショナル社が作成した「不具合を起こすためのオペレータ」(知識ベース)を使って不具合のシナリオを作成します。その結果、複数の不具合のシナリオ(不具合発生メカニズム)が考えられます。
ステップ5.不具合発生の可能性を確認する
次に、複数の不具合シナリオを、非常に危険な不具合と非常に危険ではない不具合に分類し、それぞれについて発生の可能性を確認します。
不具合発生の可能性は、まず、その不具合を発生させるのに必要な要素をすべてリストアップします。次に、その不具合が生じるために不可欠な要素が資源として実際に存在するかを確認します。
ステップ6.発見した不具合を予防する対策の検討
発生の可能性が高いことが確認された不具合シナリオのうち、非常に危険な不具合について不具合の予防策を考えます。以下、不具合発生の可能性と危険度の高いものから順に、その予防策を考えていきます。
不具合を回避する理想的な方法は、その原因を取り除くことです。しかし、さまざまな理由からこれを行うのが不可能な場合があります。
例えば、費用がかかり過ぎる、手遅れ、変更のためには他社などの同意が必要といった具合です。いずれの場合も、不具合の原因を取り除くのと、その結果を是正するのとどちらがより良いか決定しなくてはなりません。
潜在的不具合の予防策は、対策を要する不具合のシナリオのすべてについて、それぞれに対応する不具合の因果関係ダイヤグラムを作って行います。
具体的には、アイディエーション・インターナショナル社が作成した「不具合を是正するオペレータ」と呼ばれるブレークスルーのための知識ベースを使って予防策のアイデアを考えます。
不具合予測(FP)は、いわば設計品質の保証作業を行うことに相当します。つまり、現在時点で製品の未来の品質を管理することです。
なお、この考え方を知的財産の分野に採用すると、発明者から提案された発明を第三者から真似され難い権利に育てることができます(これを知的財産制御(CIP)では発明強化という)。
発明強化では、発明者から提案された発明の潜在的な不具合を予測して、その不具合が発生しないようなアイデアを追加することを考えることになります。

ものづくりプロセスに不可欠な不具合分析(FA)

アイディエーション・インターナショナル社が開発した不具合分析(FA:Failure Analysis)は、革新的なものづくりプロセスにはなくてはならない手法であると考えます。
問題解決の最初の段階では、問題を抱えているシステムの現状を詳細に把握することが重要になります。問題状況の把握ができると、取り組むべき課題が明確になり、問題解決までの距離が一気に縮まります。
I-TRIZでは「問題情報の把握」という名の下に、問題を多くの観点で観察するシステムアプローチを行って利用可能な資源を把握し、システムを変化させるうえでの制約と制限を明らかにします。制約と制限は問題解決の良否を判定する際の評価基準になります。
システムアプローチには、(1)システム階層、(2)機能、(3)時間、(4)問題といった4つの観点がありますが、不具合分析(FA)は問題の観点に関係します。
問題の観点では、問題の直接の原因は何か?、解決すべき問題は何か?、問題の状況が改善されないとどのような望ましくない結果が起きるか?、などの内容を確認します。
問題解決案を出すには、問題を抱えているシステムを何らかの方法で変化させて、問題の原因がなくなってしまうか、原因が望ましくない結果を引き起こすことがないようにすることが可能かを考えます。
このときに重要なのが、原因はどのようにして結果に変わるのかという問題発生のメカニズムを知ることと、問題が起こるにどのような条件が必要か?、といことです。
問題発生のメカニズムを明らかにするには、一般に、その問題がなぜ起きたかという原因を順に辿っていく根本原因分析という手法が採用されますが、初めての問題や複雑な問題にあっては簡単には明らかにできません。
初めての問題や複雑な問題の問題発生のメカニズムを見つけるには、以下のような手順による不具合分析(FA)が最適です。
システムにはシステムの目的である基本有益機能とその基本有益機能をもたらすためのシステムの本来のメカニズムがあります。そして、システムの有益機能のそれぞれに伴う、またはそれによって引き起こされる有害機能もあります。
不具合分析(FA)では、不具合が不具合として認識される直前に起こった事象(最終事象)を特定します。どのようなことの直後に、あるいは起こった直接の結果として、不具合が発生したとみなされるか、その機能、作用、あるいは状態が最終事象です。
その不具合に伴って生じる、または、 不具合の際にいつも観察される事象(併発事象) あるいは特徴的な状況(特徴的状況)を確認します。不具合の出現に何らかの相関性を持つ、システム(およびその環境)の特性値やその他の事象をすべて抽出します。
システムの有益機能と有害機能が明らかになったら、システムの有益機能および有害機能それぞれのボックスを作成し、それぞれの間の関係を示すリンクでつないだダイヤグラムを作成します。
ダイヤグラムの中に「最終事象」「併発事象」および「特徴的状況」のボックスを作成し、これらと不具合とを、相互関係を示すリンクによって結びつけます。
出来上がったダイヤグラムを見ながら、すべてのボックス同士の因果関係の整合性を確認することで、どうしたら不具合が起こせるかの仮説を立てます。次に、その仮説を可能にする資源がシステムの中やその環境に存在するか否かを確認します。
複数の仮説が考えられた場合には、作用する力が大きいメカニズム(弱い力しか働かない現象よりも、大きな力の働く現象の方が生じる可能性が高い)や単純なメカニズム(少数の前提条件が同時に成立つ確率は、多くの前提条件が同時に成立する確率より高い)を選びます。
選ばれた仮説に基づく再現試験(因果関係が確認できる程度の工作レベルの簡単な試験)を行い、その有効性を確認します。これによって不具合が発生するなら、その仮説を有効な仮説とみなすことができます。
自社の専門分野の問題であれば、問題発生のメカニズムがわかってしまえば、解決案を出すことはそれほど難しくないはずです。
解決策が出せないのは、問題発生のメカニズムがわからない場合がほとんどでしょうから、問題解決に取り組むうえで不具合分析(FA)で問題発生のメカニズムを明らかにすることが重要なのです。

因果関係ダイヤグラムの種類

問題には日常業務の改善といった簡単なものから、次世代の商品・サービスの企画といった大掛かりなものまであります。
ここでは、次世代の商品・サービスの企画を例にして、因果関係ダイヤグラムの使用場面とその種類について説明します。
次世代の商品・サービスの企画では、そもそもプロジェクトの目的についての検討が重要な要素です。そのため、最初にプロジェクトが置かれた状況について検討します。
1.プロジェクトが置かれた状況を表すダイヤグラム
プロジェクトに関係するシステム(複数かもしれません)、プロジェクトに求められる要件、プロジェクトに課せられた制約、プロジェクトの目標を確認し、プロジェクトが置かれた状況をダイヤグラムにして、プロジェクトの狙いを変更する必要がないか検討する。
その際に、プロジェクトの狙いをより現実的なものとする必要は無いか、プロジェクトの狙いと「上位システム」(上位部門、会社全体、など)が目指す目的との整合性を高める必要はないか、を確認する。
2.対象システムの進化の経緯を表すダイヤグラム
(1)システムの進化を促進する要因、システムの進化を阻害する要因、システムの進化の限界や制約条件、(2)進化の歴史の中の主な出来事と出来事同士の間の関係、(3)システムの進化に関係する諸問題に着目して、対象システムの進化の状況を表したダイヤグラムを描く。
3.上位システムの進化を表すダイヤグラム
(1)上位システムの進化について、主な促進要因、阻害要因、制約条件、(2)上位システムの進化に関連する主な出来事とその相互関係、(3)上位システムの進化に関連する問題・課題に着目して、対象システムと様々な上位システムとの間の関係をダイヤグラムに描く。 たとえば、自動車の上位システムには、自動車産業、輸送システム、自動車販売、個人あるいは組織の資産、交通関連制度体系、余暇、安全などが含まれます。
4.市場の進化を表すダイヤグラム
(1)顧客、(2)販売(販売網、販売体制、セールスマンなど)、(3)競争相手、(4)関係する他の企業(金融、監査、保険、安全保障、その他)、(5)政府・官庁(税、規制など)、(6)関係する社会集団、組織などが対象とする市場にどのような要因・問題となって影響してくるかを考察して、市場の特性を把握した上で、事業形態(投入・活用する資源が最終的に利益へと形を替える仕組と考えることができます)を表すダイヤグラムを描く。
5.進化を阻害する要因を表したダイヤグラム
あなたが対象としているシステムに関係のある様々な上位システムのそれぞれについて、その上位システムが代償システムに押し付けている阻害要因と制約を確認し、対象システムの進化の促進要因と阻害要因や制約の関係をダイヤグラムに描く。
一般的な阻害要因としては、(1)競争の圧力、(2)マーケティング上の問題、(3)技術的限界、(4)心理的・社会的問題、(5)経済的な限界、(6)環境に関連する制約、(6)安全面での制約などが考えられます。
主な制約や問題点と、それぞれを克服・解決するために取ることのできる手段をリストアップすることによって、(1)当該のシステムの次世代のシステムが目指す方向性の選択、(2)プロジェクトが進行した段階で得られるアイデアや方策案の有効性の評価、といったことが可能になります。
6.有益機能を表したダイヤグラム
システムはどのような有益機能をもっているか、また、それぞれの機能はどういう位置づけに分類されるかを考えて、システムの様々な有益機能の状況をダイヤグラムに描く。 有益機能には、(1)基本機能:システムが作られた目的となっている機能(乗用車の基本機能は人を移動させることです)、(2)補助機能:基本機能が実現するようにする機能(乗用車の補助機能:操行、変速など)、(3)付属機能:基本機能に追加される機能(乗用車の付属機能:ラジオの受信、空調)といった種類があります。
7.有害な要因(有害機能)を表したダイヤグラム
システムの機能と有害な結果との関係をダイヤグラムに描く。 有害な要因には、(1)材料、生産、維持、使用、修理、排気などの、直接の費用、(2)システムが存在することに関係する間接的な費用(設置場所、再生不能な資源の消費、事故、環境への悪影響、など)があります。
8.機能間の矛盾を表したダイヤグラム
有益機能を表したダイヤグラムと有害な要因(有害機能)を表したダイヤグラムを組み合わせることで、対象システムの有益な機能と有害な影響との関係を表したダイヤグラムを描く。 ダイヤグラムから読み取ることのできる機能間の矛盾は、以下の様式に沿って表現することができます。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、他の有益機能 [有益機能の内容を書く] を妨げる。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、有害機能 [有害機能の内容を書く] が生じる原因である。
システムの有益機能 [有益機能の内容を書く]は、システム自身に対して有害な影響[有害な影響の内容を書く] を与える。
次世代の商品・サービスの企画といった大掛かりな問題を扱うDE(Directed Evolution)プロジェクトの場合には、以上のような多くの因果関係ダイヤグラムを作成することになります。
ちなみに、一般的な技術問題の解決を目的とするIPS(Inventive Problem Solving)プロジェクトであれば、最後の機能間の矛盾を表したダイヤグラムだけで解決策を考え出すことができます。

I-TRIZを使ったコンセプト開発から発明強化まで

NPO法人日本TRIZ協会が主催するTRIZシンポジウムが今年で第9回目(開催日:9月5日、6日、開催場所:統計数理研究所)になります。
そのプログラムを見ると、TRIZとQFD(品質機能展開)、TM(タグチメソッド)、AHP(階層化意思決定法)といった他の管理手法と組み合わせて使うことが有効であるという発表が多いことがわかります。
このことは、裏を返せばTRIZはそれ自体では企業活動の一部にしか使えないことを裏付けているかのように見えます。
その一方で、今年のTRIZシンポジウムの特徴的な点は、知的財産マネージメントの分野にTRIZを活用した事例発表が多いことです。
ところで、I-TRIZは、技術的問題解決に特化した古典的TRIZの複雑さと使いにくさを改め、非技術的問題へも使用できる適用範囲の広い方法論を提供するものです。
技術的問題、非技術的問題のいずれも、その問題解決プロセスには、(1)問題の分析、(2)解決策の提案、(3)状況分析(解決策を適用した場合の影響分析)、(4)解決策の価値評価という要素が必要になります。
また、新しい商品・サービスを提供する企業にとっては、(1)企画、(2)開発、(3)設計、(4)生産、制作、(5)販売、(6)知的財産管理、といったモノ、コトづくりのプロセスが必要になります。
I-TRIZは問題解決プロセスおよびモノ、コトづくりプロセスの両者に必要な条件を満足する体系的な方法論として完成されたものです。
I-TRIZでは、企画段階においてはシステム(商品・サービス)の外部環境である上位システムの将来を予測するとともに、そのシステムを駆動するための下位システムを整える次世代のコンセプトを開発するための戦略的世代進化(DE:Directed Evolution)を適用します。
開発段階においては、問題を多観点で分析し問題の全体像を把握した上で内部環境の資源を勘案した戦略のもと、問題発生メカニズムを解明する不具合分析(FA:Failure Analysis)を適用し、問題の原因を排除するために先人の知恵をヒントにした解決コンセプトを立案すべく発明的問題解決(IPS:Inventive Problem Solving)を適用します。
設計段階においては、上市する商品・サービスの未来品質を保証する具体的な構成を考えるために不具合予測(FP:Failure Prediction)と発明的問題解決(IPS)を適用します。
生産、制作段階においては、その過程で生じる品質やコストの問題を解決するために、不具合分析(FA:Failure Analysis)と発明的問題解決(IPS)を適用します。
販売段階においては、商品・サービスに関する顧客の不満足を満足に変えるために、不具合分析(FA)と発明的問題解決(IPS)を適用します。
知的財産管理段階においては、上市する商品・サービスの実施を保証するための他社特許の回避、競合他社からの模倣を排除するための発明の強化、知的財産の有効活用をするための発明の評価、といったことを目的とする知的財産制御(CIP:Control of Intellectual Property)を適用します。
I-TRIZは、他の手法に頼らずとも問題解決プロセスおよびモノ、コトづくりプロセスの各段階に最適な独自の新たなTRIZの方法論(DE,IPS,FA,FP,CIP)が使えるようになっています。
TRIZを基礎とした進化したTRIZがI-TRIZということです。
TRIZが使えないという前に、TRIZの基本理論に支えられたI-TRIZの進化した新たな方法論を活用してみてください。
その使いやすさとその威力に驚くこと間違いありません。
なお、新しい方法論が体験できるセミナーの日程は以下よりご確認ください。
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