投稿者: 長谷川公彦
TRIZの使命と戦略的世代進化(DE)
派生する資源を活用するためのオペレータ
前回I-TRIZでは、「システムアプローチでシステムおよびその周辺に存在する資源を抽出したら、抽出した資源を変更することで問題が解決できないかと考えます。」という説明をしました。
また、資源には、現状のまま使用できる資源(存在する資源)と、何らかの変更処理の後で使用できる資源(派生する資源)とがあることを説明し、6つの存在する資源について問題を解決するために適用する推奨事項(オペレータ)を紹介しました。
今回は「派生する資源」を活用する推奨事項(オペレータ)を紹介します。
派生する資源とは、何らかの変更処理の後で使用できる資源のことですので、変更処理の内容がわからなければ具体的な派生する資源を認識することは勿論、イメージすることもできません。この点が存在する資源と派生する資源との違いになります。
他人が気づいていない「存在する資源」で問題解決の有効なものが見つかれば、他人が簡単には思いつかない解決策が得られる可能性が高いことになります。
直接認識することができない新たに考え出した「派生する資源」を活用した解決策の場合は、さらに革新的な解決策になる可能性が高いことになります。
派生する資源を活用するには、以下のような推奨事項(オペレータ)を参考にします。
(1)派生する物質資源
物質資源にはシステム、およびその環境を構成するあらゆる種類の物質が含まれます。使用可能な派生後の物質資源を活用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を考慮してください。
- 廃棄物の変質
物質を追加する場合は、廃棄物を変質させて必要な物質にした方がよい場合もあります。 - 素材または製品の変更
物質を追加する必要がある場合は、未加工な材料、未完成品、または完成品に変更して、その物質を追加した方がよい場合もあります。 - 他の物質への変更
物質を追加する必要がある場合はシステム、または環境に既に存在する物質に変更して、その物質を追加した方がよい場合もあります。
- 水処理
水は比較的安価で手軽に利用できるので、資源として活用する上でその特性を変更させることを検討してください。
(2)派生する場の資源
直接利用できる場の資源がない場合は、派生する場を適用してください。これらの資源は、使用可能な場(エネルギー)、作用を変化させることによって得られます。
以下の推奨事項(オペレータ)を考慮してください。
- システムから既存の場を変換
場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、システム内の既存の場を変換して、必要な場にする方がよい場合もあります。
- 周辺環境から既存の場を変換
場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、環境内の既存の場を変換することを検討してください。
- システム発生源から場を変換
場(力、効果、作用、エネルギー)の追加が必要な場合は、システム内の既存の物質から生成される場を検討してください。
(3)派生する時間資源
システム、またはプロセスの処理時間が不足している場合は操作、またはプロセスの加速、減速、中断、または継続を検討してください。
(4)派生する機能資源
場(システムまたはプロセス)、またはその一部によって既に実行されている便利な機能を変換して、新しい機能を達成することを検討してください。
(5)派生する資源の蓄積
利用可能な資源の量が不足している場合は、必要量を蓄積することを検討してください。
(6)派生する資源の集中
利用可能な資源が不足している場合は、資源を集中させ、必要に応じて適用量を利用することを検討してください。
システムアプローチで使用するオペレータ
問題を解決しようとするときには、ほとんどの場合、問題が起こっているシステムそのものに焦点を合わせて考えます。しかし、経験を積んだ技術者は以下を視野に入れて問題を多角的に捉えようとします。
システムアプローチとは、超一流の技術者の思考を真似るための方法といえます。
システムアプローチは問題状況の予備的分析の段階で使用し、(1)システムの階層、(2)時間、(3)問題、(4)機能の4つの観点から問題状況を体系的に分析するために実施します。
(1)システムの階層という観点では、システム、システムの構成要素である下位システム、およびシステムに関連する上位システムを観察します。
(2)時間という観点では、システム、下位システム、および上位システムそれぞれの過去の、ならびに、予想される未来を観察します。
(3)問題という観点では、問題の原因、問題の結果として生じる不都合、および、これらに関連する問題との関係を観察します。
(4)機能という観点では、システムに対する様々な入力、システムからの出力、これらに関連するシステムの機能との関係を観察します。
システムの階層、時間、問題、機能の4つの観点からシステムが抱えている問題状況を分析する目的は、問題を解決するために変更できる可能性のある資源を見つけることです。
資源とは、システムおよびその周辺に存在する物質、場(エネルギー)、特性、機能などであり、システムの改善に活用できるものです。資源には、現状のまま使用できる資源(存在する資源)と、何らかの変更処理の後で使用できる資源(派生する資源)とがあります。
存在する資源には、(1)物質資源、(2)場の資源、(3)空間資源、(4)時間資源、(5)情報資源、(6)機能資源の6種類があります。
資源に手を加えない限り、システムの問題状況を変えることはできません。したがって、問題を解決するには、システムに関係する資源を変更することが必要になります。
問題解決とは、「どの資源をどのように変更するか」を決定することです。
また、「技術システムは理想性が増加する方向に進化する」というのがTRIZの基本的な認識ですので、問題解決とは「システムの理想性を高めること」であるともいえます(「理想性」とは、システムに含まれる有益機能の総和と有害機能の総和の比率であると定義されるものです)。
つまり、問題を解決するには、「資源を活用してシステムの理想性を高める」ことを考えればよいことになります。
I-TRIZでは、システムアプローチでシステムおよびその周辺に存在する資源を抽出したら、抽出した資源を変更することで問題が解決できないかと考えます。
実際には、以下のとおり、6つの資源についてソフトウェアから提示される推奨事項(オペレータ)に沿って具体的な検討をしていくことになります。
(1)物質資源
物質資源には、システム、およびその環境を構成するあらゆる種類の物質が含まれます。
使用可能な物質資源を活用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。
- 廃棄物
- 素材・未完成品
- システム要素
- 安価な物質
- 物質の流れ
- 物質特性
(2)場の資源
場の資源にはシステム、またはその周辺に存在していて使用可能なあらゆる種類の場が含まれます。
Ideation社の問題解決技法では、対象物同士が互いに発するあらゆる種類の作用を場と定義しています。物的な場(重力場、電磁場、および2つの核作用場の4つのみ)とは対照的に、Ideation社の技法では更に多数の場(機械的場、熱場、化学場、電気場、磁場、および電磁場(放射の場))を考案し、活用しています。システムや環境内で使用可能なあらゆる種類のエネルギ、作用、力などは、既に存在する利用可能な場の資源とみなすことができます。
場の資源が必要な場合は、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。
- システム内の場 (エネルギ)
- 周辺環境の場 (エネルギ)
- 場の提供者
- 放出される場(エネルギ)
(3)空間資源
空間資源には、システムまたはその周辺にある自由な非占有空間が含まれます。この空間は、新しいオブジェクトを配置する際に使用できます (空間の節約や空間の制限をするため)。
使用可能な空間資源を利用するには、以下の推奨事項 (オペレータ) を考慮してください。
- 空間の占有
- 他次元の活用
- 垂直方向に配置
- 反対側の活用
- 入れ子(マトリョーシュカ)
- すき間を通過
(4)時間資源
時間資源には技術上のプロセスで繰り返されるサイクル、最初から、最後までに発生する部分的または完全に利用されていない時間を含みます。
以下の利用可能な時間資源を参照してください。
- 事前の処理(作用)
- 部分的な事前の処理(作用)
- 事前の配置
- 処理の中断
- 無駄な運動の排除
- 後処理の時間を活用
- グループ処理
- 時間をずらす
- プロセスの後の時間
(5)情報資源
情報資源にはシステムから放射される場、あるいはシステムを通り抜けるものや場から知ることができるシステムに関する追加情報も含まれます。
既存の情報資源を利用する方法を見つけるには、以下の推奨事項(オペレータ)に沿って考えてください。
- 放出エネルギ(場)
- 物質特性
- システムから出る物質
- 通過する物質・場の流れ
- 物質特性の変化
(6)機能資源
機能資源には、本来の機能に加えて機能するシステムやその周辺機能が含まれます。その特別な効果は、技術革新の結果として生じる、通常は期待しない付加価値といえます。
既存の機能資源を利用するには、以下の推奨事項(オペレータ)を参照してください。
- 資源-機能
- 資源-潜在機能